ペットとして飼育されるようになった犬は我々人間のパートナー的な存在となりましたが、本来は土に巣穴を掘って暮らす(休む)狼を祖先とする穴倉動物です。

そういった習性の犬をペットとして飼育していく上でも、やはり巣に相当するものが必要となります。

それが“ハウス”です。

以前、ハウスがないお庭で放し飼いにされている犬の気持ちを描写したユニークなテレビCMが放映されていました。

こちらがその映像です。

もうお解りでしょうが、ここに登場するおじさんは“犬”です。

庭で放し飼い状態のワンちゃん(おじさん)は朝から晩まで外敵(家の前を通る人や来客)の気配を感じる度に怯えながら「ワン!ワン!(誰?誰!)」と吠えて(叫んで)います。

まさにこの状況こそがハウス(ケージやサークルなど)がない状態で放し飼いにされているワンちゃんの気持ちなのです。

室内飼育・屋外飼育を問わず、子犬の時期から放し飼いにしてしまうと落ち着きのない性格になり得ると言われている理由もこの映像からよくお解り頂けることでしょう。

実はそのハウスが子犬の精神衛生上でプラスになるだけではなく、子犬のしつけにおいてとても重要な役割を果たしてくれます。

人間の感覚だと犬のハウスは『犬を閉じ込めておくオリ』と考えてしまいがちですが、先程も述べたように穴倉動物である犬たちは広過ぎないサイズ感のハウスに安らぎを感じます

ワンちゃんは与えられたハウスを安心感の得られるスペースと認識すると、そこを自分専用のテリトリーと考えるようになります。

そして飼い主さんはハウスで休んでいるワンちゃんには干渉せず、これまでの生活スタイルを変えることなく今まで通り過ごしてください。

こういったワンちゃんをハウスで過ごさせる飼い方を“ケージ飼い”と呼びます。

そのケージ飼いを成犬(1才程度)になるまで続けるだけで、ワンちゃんは人間(飼い主)との立場の違いを自然に理解してくれるのです。(成犬になってからもケージ飼いを続けて頂いて構いません)

これに対し、ハウスを与えられていないワンちゃんは必然的に飼い主さんと同じ行動範囲で生活することになります。

結果的にその放し飼い状態が『自分は人間と対等な地位』という勘違いを引き起こし易くし、場合によっては人間より上位と勘違いさせてしまうこともあるのです。

最初からハウス中心で過ごさせる“ケージ飼い”と室内やお庭を自由に放した状態で過ごさせる“放し飼い”とでは明らかに今後のしつけに差が生じてきます。

子犬をしつけるための基礎知識の各項目で解説してきたことを忠実に実行し、ハウス中心の飼育(ケージ飼い)を心掛ければしつけの基礎作りは完了したといっても過言ではありません。

そしてこれらの基礎作りがしっかりと出来てさえいれば、家庭犬レベルのしつけなら飼育初心者さんでも驚くほどカンタンに出来てしまいます

なぜならそれはあなたの愛犬があなた自身のことを尊敬に値するリーダーと認識し、そのリーダーからしっかりと守られていることを最高の安堵と感じるからであって、すなわちそれが野生の犬社会におけるボスと群れのメンバーの関係に値するのです。

つまりハウスはワンちゃんの習性を上手く活かし、なおかつワンちゃんに負担を与えることなく今後しつけをする上での基礎作りが出来てしまうスーパーアイテムなのです。

お手入れかんたんケージ
色々使って結局最後にたどり着く、丈夫な造りで使い勝手バツグンのお手入れかんたんケージ
https://www.inuno-cage.com/cage/

大抵は成犬時のサイズを考慮してハウスを選びますので、子犬の時期はハウス(ケージやサークル)が大き過ぎることもあるでしょう。

そんな時はハウスの中に寝床としてペット用のベッドなどを用意してあげれば大丈夫。(なければ応急用としてダンボール箱等で代用しても構いません)

寝床が大き過ぎると子犬は落ち着いて休めませんので、身体を丸めた状態で収まる程度の大きさが理想的です。

それでもハウスのスペースが余ってしまうような場合は、中に置く寝床としてクレート(キャリーケース)を使って対応しても良いでしょう。(クレートがあれば旅行やクルマでの外出にも便利ですね)

ただし、クレートは本来ハウスの中に置いて使うものではありません。

そもそもケージ自体がクレートの役割を担っているので、ハウスの中にクレートを置くことを前提に考えてわざわざ大きなハウスを選ぶのは本末転倒ですね…。

そして成犬になった段階でお部屋でひとりにしてもイタズラしない程度までのしつけが出来ていれば、ハウスに自由に出入り出来る状態にして放し飼いにしても良いでしょう。

これから子犬を飼育される方も、既に愛犬を飼育されている方も、必ず飼育環境や犬種に見合ったハウスを用意してあげましょう。

次のページではワンちゃんがハウスを嫌がるケースについて解説して参りましょう。

 

次のページ
【ハウストレーニング】2.ハウスを嫌がる場合